2011年3月11日に発生した東日本大震災により、石巻市の沿岸部に位置する当館もサン・ファン・バウティスタ復元船を取り囲むドック棟を中心に大きな被害を受けました。ドック棟には、精巧に作られたサン・ファンバウティスタの38分の1スケールの模型や船大工道具、大航海時代の帆船文化等について学べる展示スペースがありました。大津波の直撃で水位はドック棟の天井まで達し、サン・ファンバウティスタも一時は8メートル程も浮き上がり、左右に大きく揺さぶられました。大津波はその後何度も押し寄せ、ドック棟壁面のガラスを破壊し、ほぼ全ての展示物を流失させたのです。サン・ファン・バウティスタはドックに留まり、流失こそ免れたものの、震災翌月に起きた強風により中央のメインマスト見張り台上部のトップマストと、前方のフォアマストが折損。二度の災害により、サン・ファン・バウティスタは大きな被害に見舞われてしまいました。
大震災後、痛手を受けたサン・ファン・バウティスタの元に、思いがけない支援の声が届きました。被災地支援のため仙台を訪れていたカナダのブリティッシュコロンビア州の方々がマスト材修復のための木材の提供を申し出てくれたのです。同国の木材生産者団体「カナダウッド」の仲介を経て製材会社「ウエスタン・フォレスト・プロダクツ社」より、2012年6月ベイマツ4本、スギ1本が寄贈されました。2013年10月末、フォアマストの修復が終了。大震災から2年8ヶ月を経て、ようやくサン・ファン・バウティスタの勇姿が石巻の海に甦りました。その間、休館を余儀なくされていた当館も同年秋、慶長使節出帆400周年の節目に一般公開再開の日を迎えました。
◎メインマストを大型クレーンで慎重に吊り下げ、遮浪甲板、上甲板を貫通させ、船底にある深さ20センチのマスト用架台受部にしっかりとはめ込む。
メインマストは垂直ではなく、船首側に1/50傾斜にして調節の上固定する。
◎貫通させた繋ぎ目の周りはステンレスの鉄板で溶接し、固めたその上から厚さ50ミリの板を貼り付け鉄板部分を覆いボルトで締める。
◎マストの貫通部分(2カ所)は長さ約1メートルにわたり八角に成形してある。さらにしっかりと固定させるために八角部に8本ほど矢(くさび)を打つ。
矢打ちは1日で終わるが1回締めた後、ゆるみを調整するために打ち直し固定する。